No.29 大井沢農作業受託組合 代表理事 渋谷健悦さん

Story No.29 大井沢農作業受託組合 代表理事 渋谷健悦さん

「地域を守っていくために必要なのは、地域で雇用を生み出すこと」

渋谷健悦さん Profile
1948年生。西川町大井沢出身、在住。妻と二人暮らし。※1 大井沢農作業受託組合代表理事。中学卒業後、農業をやっていた父親の手伝いで農業に従事し始める。若い頃は、夏場は農業、冬場は都市部に出稼ぎをして暮らす。(1975年頃から2011年までは、除雪仕事に従事)。1996年、地区内で徐々に増えてきた耕作放棄地を解消すべく、大井沢そば組合を発足。2000年、現組織名に改名すると共に法人化を実施。現在は、そばの他にほうれん草、枝豆等を栽培している。

※1 大井沢農作業受託組合
2000年に発足した農業生産法人。栽培している作物は、山菜、ほうれん草、枝豆、そば、ワサビ、米。地元・大井沢で販売している米と、農協に卸しているそば以外の作物は市場やスーパー(一部関東圏)との直接取引を実現している。その他、そばの刈り取り作業等を受託している。

組織を作った理由(わけ)
 今から13年前の、2000年。当時、大井沢そば組合の組合長をしていた私は、当組合を法人化し、大井沢農作業受託組合として発足させました。
 ―――あれは、1995年頃のこと。大井沢の農地が徐々に荒れてきているのを目の当たりにしていた私と数名の有志で、歯止めをかけようと作ったのが大井沢そば組合。田んぼだった土地を畑地化するということで、地元からの相当な抵抗はあったものの、最終的には反対を押し切り、そばを作り始めたんですよ。それがあったから今の自分があると思っています。
 当初2.8haしかなかったそばの作付面積も、毎年かなりの勢いで増え、今では約35ha(刈り取り作業を受託している分を含めると約50ha)にまで膨れ上がっています。実際、始めてから数年の間は全然お金にならなかったですけどね。当時は、まだ妻が勤めに出ていたから良かったんですよ。やっぱり、どんな組織であれ、下積みは必要でしょうから。特に、農業は普通の会社とは違うわけですしね。

経営者として
 現状として、作ったものは全て売れているし、借金をしない健全経営ができているけれど、会社として、経営者として決して今の状態で満足はしていないんですよね。例えば、来年ほうれん草のハウスをもう少し増やすつもりでいるというように、少しずつでも規模を大きくしていきたいと思っています。むろん、品質も維持しながら。「あそこの組合のものは質がいい」との評価を保ち続けないと取引先も選んでくれなくなりますからね。
 それから、経営者としていつも念頭に置いているのは「どのようにすれば儲かるか」ということ。だから、「これでいいのか」という疑問は常について回るんです。仮に新たな作物を作るとしても、それが収入につながるまでは最低3年かかるわけで。その間持ちこたえられるだけの体力が一企業として必要なんですよ。あくまでも、それは利益に結びつくかどうかわからない先行投資ですしね。
 人材に関しても、同じだと思います。だから、「うちの組合に来て働きたい」という若い人がいれば、裁量を持たせてそれなりにきちんと責任を持って仕事をやってもらうつもりでいます。さもないと企業としてこれから生き残っていけないでしょうから。それに、働く方としても、難儀しないとものは覚えられないでしょうし、責任があるからこそ仕事の面白味も増すはずですから。――私もこれまで、いちごや、花の栽培を始めとして色んなものを試みてきましたから。「人がやっていないことをやらないとダメだ」という思いのもとで。
 そんな方針で動いている当組合では、仕事をする人は自分で動いて色々覚えていかないといけないし、経営者としてはそういう場所や機会を作ってあげる必要があります。例えば、ほうれん草の栽培で自信をつけて今のようになれた昌邦なんかはよくやっていると思いますよ、私にさんざん怒られながらだけれども。(笑)農業に関しては全くの素人だった状態からスタートし、試験的に栽培し始めたほうれん草を2年目から担当させられたわけだから彼も戸惑ったでしょうけどね。
 そんなほうれん草も含めて、そば組合発足後約17年の間でも色んな作物を試してきました。あと1、2年したらまた新しい作物にチャレンジしてみようかとひそかに思っている今日この頃です。

これからの課題
 これからの一番の課題としては、ここで働く若い人をどのように確保していくかということ。おそらく、3年後くらいが勝負時でしょう。今、うちで働いている年配の方々(70代が中心の約10名。年間約70日ほどの雇用を実現している)が働けなくなった時に、若い世代にうまく移行できるかが大きなキーポイントなんです。
 今、若い人を2人くらいは雇用できる余力はあるから、やる気さえあれば受け入れます。やっぱり、大井沢という地域を維持していくためには、地元企業が地元の人たち(移住した人も含めて)の雇用の場を作り出さないといけないと思っていますから。
 だけど、最大のネックは雪。雪が多い大井沢では、12月~4月くらいは農業で収入を得られないから、除雪など他の手段でお金を稼がないといけなくて。本当は、その時期以外で一年分稼いで冬は休ませてあげられるのが理想なんですけどね。現実としては、やっぱり難しくて…。
 まぁ何にしても、食べものに携わっているうちは大丈夫なんじゃないでしょうかね。希望も含めて、これからもっと”食”という分野が見直されてくると思いますし。それに、人が生きていくためには、真っ先に「食べる」ことがあるわけですから。

 

[編集後記]
現場の第一線に立ってきた人の言葉は、やっぱりどこか違って聞こえる。

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