#69 (有)三英クラフト まき市場担当 / チェーンソーアーティスト 佐藤秀也さん

いつも心がけていること
 「古いものを知った上で、新しいものに挑戦する。」自身にいつもそう言い聞かせているし、何でもそう考えるようにしています。本業においても組織内で一社員として決められたことをこなす中でも決められていないこともやろうという意識は常に持っています。やっぱり古いことは断ち切らないと、進化が起こりませんからね。
 新しいこともやってみて初めて成果が出ます。新たな目標もやってみて初めて生まれるもの。「やってみなきゃわからない」というのは、私のモットーなんです。後輩に対しても折に触れてそのことは言っていますし、彼らの挑戦意欲を頭ごなしに奪わないようにはしています。
 チェーンソーアートでも、古いもの、例えば最初に作った作品などは戒めとしてとっておきます。それは表に出ることはありません。でも、彫刻でも仕事でも然りだけど、その古さがあるからこそ、つまりそういう自分がいたからこそ今の自分がいるわけですよね。陶芸家が気に入らないものを割ってしまうという気持ちはわかります。でも、下手くそで自分の理想とは違い恥ずかしいんだけど、その当時の自分だったり辛かった時を思い出すために残しているんです。
 少し話は変わりますが、いつも家族にうるさく言うのは、「今出来るもので精一杯できない人間は、新しいものを手に入れても無駄にするだけだ。だから、パパは買わないよ」ということ。なので例えば、鉛筆一本も無駄にさせません。子供に「鉛筆が短くなっちゃったから、新しいの欲しい」と言われても、「まだ使えるじゃん」と言います。「これが新しくなったら…という考えを持つな」ということなんですよね。ろくに使いこなせてない段階ではそのモノの良さなんて全然わからないわけですから。
 決められたことをこなすのは、誰だってできるんです。でも、決められた中で決められていないことを生み出そうと試みる。なかったら、作る。それで、自分では作れないとなって初めて買うしかない…と考えるべきだと思います。
 だから、私の使っている道具を見た人は笑うんじゃないかな。例えば、サンダー(紙ヤスリ的な用途で使用するという電動工具)に近いものは自作しています。電動ドリルの刃に紙ヤスリをガムテープで貼りつけてプロペラのごとく回して、ブラシ代わりにしています。恥ずかしいんだけど、これがいい仕事をするんですよ。(笑)いや、既製品は便利なんですよね。使った時もあって便利さはわかっている。でも、買うとなると4万くらいするし、自分はこれで十分だと思うわけです。
 そこは徹底しています。「うるさい」と言われるくらい、家でも徹底していますね。(笑)基本的に、貧乏性なのかもしれません。(笑) 

私にとっての仕事
 仕事上でもそういった私の考えはどこかに反映されているでしょうね。でも、組織の中にいるわけですし、自我はあまり出さないようにしています。さもないと、ワガママになってしまいますから。
 今、本職の仕事ではまきの販売、要はお客さんへの営業をやっています。その中で、時にはお客さんから文句を言われることもあります。そこでたとえ自身が間違っていなくとも、頭を下げなきゃいけないのが営業の辛さです。実際、ほとんど頭を下げっぱなしなので、中小企業って大変だなと思うこともあります。本当はいけないことなんでしょうけど、人と接するやり取りのないデスクワークと比較してしまう時もあります。でも、会社として利益を確保するためにはそうやって生きていかなきゃいけないし、そうするからお客さんとの信頼も生まれるんだと思います。それに何より利益が生まれるから、自分たち家族がおいしいご飯を食べれたりするわけで。やっぱり、仕事があるからこそ、お客さんがいるからこそ、「行ってきます」や「ただいま」ができるわけですから。趣味であるチェーンソーアートは、その仕事の合間をぬってやるもの。
 とは言え、私にとってチェーンソーアートは趣味なんだけど、仕事なんですよ。自身も「パパ仕事だから」と言っているので、家族もそう捉えています。本業と同じく、お客さんがいるおかげでチェーンソーアートも成り立つわけですしね。
 ただ、チェーンソーアートが本職の仕事より上に行くことはありません。でも、やむを得ずチェーンソーアートの大会やデモンストレーションで会社を休まなきゃいけない時ってあるんです。例えば、秋になると土日はほとんど家にいないという週が毎週のように続きます。だから、休みたい分、普段の仕事を頑張るようにしています。風邪を引いても休むことはありません。そうすれば、有給を取得するための用紙も出しやすくはなるし、認めてもらえる部分はあると思いますしね。
 私の中では、1に仕事、2に仕事、3、4がなくて、5というか最後に家族がくるという感覚なんですよ。だから、チェーンソーアートも家族よりは上。なぜなら、それがあるおかげで副収入ができるわけだから。副収入があるおかげで、家族が喜ぶわけだから。「1に家族」なんていうのは矛盾していると思います。かく言う私自身、若い頃は違いました。「1に遊び」であり、仕事中も早く仕事が終わらないかな~と考えたりしていました。結婚して子供も出来て一家の大黒柱なんだという意識が芽生えたことが変わったきっかけだったんじゃないかな。やっぱり、私はプロ。何があっても仕事なんですよね。

 

<編集後記>
世の中が便利になればなるほど、僕たちは気づかぬうちに創造力を奪われていっているのかもしれない。

Pocket

1 2