#70 奈良県立高田高校 野球部監督 河井泰晴さん


 なので、他校の監督さんなどと話をしている際に話題が高校時代のことに及び、色々考えてプレーしていたという話を聞くとすごいなと思うのと同時に恥ずかしくもなります。けれども、拭えない後悔の念があるからこそ、子供たちが私と同じ思いをすることがないように伝えてあげないといけないという思いは増すんです。
 だからきっと、65歳で定年を迎えるまでは野球の世界にいるんじゃないでしょうか」
 河井の野球歴は「アパッチ野球軍」在籍時代を含めると40年を超える。野球の何が河井を魅了し続けたのだろうか。
「先程も言いましたが、野球自体が進化していて、毎年のように新しい情報が入ってくることでしょうね。加えて、選手も毎年変わることによって、新しい風が吹く。だから、飽きずに続けられているんじゃないでしょうか。
 それから、やっぱり最後の夏の大会の雰囲気でしょうね。
 一年間見てきたチームは果たしてどこまで行けるのだろう。1回戦はどこと当たるのだろう…。夏が近づいてくる度、胸にわき起こるワクワクがある。そして、往々にして番狂わせが起こる高校野球の試合では、どういう展開になるのかも蓋を開けてみないとわからないドキドキがある。その何とも言えない雰囲気を一度経験すると、1年後が待ち遠しくなって、もう離れられないというような感覚になるんですよ。もちろん、自身が高校生の頃、選手としても夏の大会は経験していますけど、あっという間に終わったなというのが実感ですから。
 何でしょうね…。山に登るときのような気持ちなのかもしれません。新チームが始動した時はまた始まる、しんどいなぁという思いも芽生えます。でも、夏が近づいてくると、もうすぐ頂上だ、ここまでたどり着いたんだという感慨も湧いてきます。そういう思いを毎年味わえるからこそ、私は野球にのめりこんできたのかもしれませんね」



<編集後記>
永塚和志の綴ったコラム『野球の母国・米国から見た“甲子園”』によると、ニューヨーク・タイムズ紙のある記者は甲子園を「若者たちのハードワークと純粋さの総本山」と表現しているという。
やはり、高校野球を高校野球たらしめているのは日本人の血なのだろうか。

2013.7.28  テレビ朝日系列『ラストミーティング』より、昨年度の夏の大会終了後の映像です。

Pocket

1 2 3